使用済パソコン処分の現況と課題

法人設立の経緯


使用済パソコンはどう処分されている?

パソコン、スマホをはじめとする電子情報機器は社会に欠かせない存在となっています。それに伴って、使用済機器の廃棄も増加の一途をたどっています。

また、都市鉱山といわれるように、パソコンなど情報機器には有用な資源(レアメタル等)が含まれています。最近では、中国がレアメタルの日本への輸出制限を開始しました。

それらを回収して再利用(資源化リサイクル)できるような法律等のしくみが整備されてはいるものの、実際に適正な排出処理がなされているのは、ごく一部にすぎません。

各種の調査や報道によると、廃棄を前提としたパソコンの相当数が、廃棄物ではなく中古パソコンとして輸出されており、環境や人権的社会的に不適切な方法によって、海外で処分されているそうです。

SDGsの目標のひとつに「つくる責任 つかう責任」が挙げられていますが、電子情報機器において、実現の道のりは遠いと言わざるを得ません。

●法制度について

パソコン等の小型電子機器は、廃棄物処理法における「廃プラスチック類・金属くず・ガラス陶磁器くずの混在物」として、産業廃棄物に定義されています。事業者が使用を終了したパソコンの排出にあたっては、資源有効利用促進法、小型家電リサイクル法による再資源化が施行されている。例外として、中古品(部品も含む)として流通できる状態にあれば、古物商としての商取引が可能である。

●国内のパソコン台数

国内の事業所で使用されているパソコンは約1.3億台と推定されており、そのうち1年あたり17百万台が使用を終了しています。そのうち、上記に基づく回収実績は3.2百万台(約14%)に過ぎません(以上、公開データから2020年に分析、個人使用機器については不明)。その他は、法に則らない廃棄処分か自宅・事務所等での退蔵になるはずです。一部は中古パソコンとして流通されるものの、商品価値のあるものは1-2割程度に過ぎません。

では、東北地方においては?

国内で比較的に産業基盤の脆弱な東北地方においては、地元業者による使用済パソコンの回収が進んでおらず、特に官公庁など(収益性の高い)大中規模団体の事業用については、ほとんど首都圏を基盤とした大手業者が取り扱っているようです。

その結果、地元業者が取り扱うことによって生じるはずの経済的利益が域外へ流出し、ひいては地域の「情報化社会進展の妨げ」や「輸送など環境負荷の増大」などにもつながってしまいます。

これは、パソコン処理に通じたリサイクル関連業者や、データ消去を明確に訴求する廃棄物業者がほとんどいないことが主な原因と考えられます。

●東北地方のパソコン台数

東北地方の事業所における使用終了のパソコンは年間1.2百万台と推計されますが、まとまって排出されるのは、業務用のリース物件で年間20万台程度です。

それらのほとんどは、域外のパソコンリサイクル業者に一括売却されます。そのうち整備してリユースできるものが1-2割、分解して資源化リサイクルできるものが8割ですが、処理コストを嫌って、海外に「中古パソコン」としてコンテナ輸出されているというのが、関係業界における通説です。

一方、リサイクルとして分解分別作業を行う福祉系事業所等、リユースとして整備を行う中古パソコン店等は東北地方に散見されますが、材料である使用済みパソコンを確保するルートが地域内にほとんど存在しないので、小規模少数にとどまっています。したがってほとんどは、首都圏業者から高価格で仕入れする、すなわち買い戻ししていることになります。

処分が進まないのは、データ消去ができないから

セキュリティ対策としてのパソコンのデータ消去に関連し、「神奈川県庁ハードディスク転売・情報流出事件」が発生したことから、総務省では自治体を対象として、パソコン等の廃棄等時のデータの抹消措置について、2021年に新たな指針を示しました。

しかし、この指針には具体的な方法が専門的すぎることから明示されておらず、事情と技術に精通した首都圏の大手業者以外には対応できません。したがって、このままでは前述の域外への流出がとどまることはありません。

この総務省ルールは、情報漏えいを防ぐより確実な方法として、今後、他の省庁や公的団体、民間企業などでも標準になっていくと考えられます。

事業所や家庭に退蔵されたままのパソコンも相当台数にのぼり、主な理由は、データ漏えい防止のためのデータ消去です。その方法も委託業者も費用もわからないことが多いので、退蔵が増えるわけです。

●「神奈川県庁ハードディスク転売・情報流出事件」とは

神奈川県庁で2019年、使用済となったパソコン相当数をリース業者Aへ返却しました。Aはリサイクル業者Bへ破棄(データ消去を含む)を委託したところ、データ消去措置がなされなかったハードディスクドライブ18個が、従業員によってインターネットオークションサイトで転売され、流出するという事件がありました。Aはデータ消去を行った旨の報告を神奈川県に行っているといいます。ABともに業界では大手であります。

●総務省の指針とは

上記を受けて、総務省は「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和3年3月、令和4年3月改定)を策定し、パソコン等の廃棄等時に、記憶装置データの抹消措置を行うように、新たな指針が示されました。ポイントは下記のとおり。

*機密性に応じた措置

専用ソフトによる上書き消去が重要。重要機密については、さらに高度な方法を追加。

物理的破壊の軽減

穿孔や磁気消去など物理的破壊だけの措置では不十分。最近の世界的な研究成果により明らかになったため。またSDGsの観点から、廃棄ではなくリサイクルを推進すべきとの目的も。

庁内での作業

委託する場合でも、庁外に持ち出さずに庁内で第一次抹消作業を行うこと。リース契約の機器についても同様。